子犬や子猫を家族に迎えたとき。
元気いっぱいに走り回ったり、いたずらをしたりする姿を見ながら、その子が年老いた姿まで想像する人は、あまり多くないかもしれません。
カーテンによじ登ったり。
ティッシュを引っぱり出して遊んだり。
家の中を突然ものすごい勢いで走り回ったり。
「またやってる……!」
なんて困りながらも、そんな毎日がずっと続くような気がします。
でも犬や猫も、私たちと同じように年を重ねます。
いつの間にか以前ほど遊ばなくなったり。
寝ている時間が増えたり。
高いところへ上らなくなったり。
散歩のペースがゆっくりになったり。
トイレを失敗するようになったり。
ある日突然「老犬・老猫になる」というより、毎日の小さな変化を重ねながら、少しずつシニア期へ入っていきます。
今回は、犬や猫がシニアになると暮らしがどう変わっていくのか、そして私たち飼い主ができることについて考えてみたいと思います。
犬や猫の「シニア期」って何歳くらいから?
「何歳になったらシニア?」
これは犬種や猫種、体格、健康状態などによっても違うため、すべての犬猫に共通する年齢を一つに決めることはできません。
特に犬は体格によって年齢の重ね方にも違いがあります。
そのため、
「○歳になったから今日から老犬・老猫」
と線を引くより、
その子自身にどんな変化が現れてきたか
を見ることの方が大切です。
昨日まで元気だった子が、誕生日を境に突然おじいちゃん・おばあちゃんになるわけではありません。
少しずつ変わっていく姿を見ながら、その子に合った暮らし方へ調整していきましょう。
年齢を重ねると、こんな変化が見られることがあります
環境省のガイドラインでも、犬や猫は高齢になるにつれて視力・聴力・嗅覚などの感覚が衰えたり、動きが鈍くなったり、睡眠や休憩の時間が長くなったりすることが紹介されています。環境省_住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
ただし、老い方は一匹一匹違います。
ここで紹介する変化がすべての犬猫に起こるわけではありません。
1.寝ている時間が増える
昔はおもちゃを見ただけで飛んできたのに、最近は寝ていることが多い。
そんな変化を感じることがあります。
若いころと比べて活動量が減り、ゆっくり過ごす時間が増えていくことがあります。
だからといって、無理に若いころと同じように遊ばせる必要はありません。
その子が心地よく過ごせるペースを大切にしてあげましょう。
2.動きがゆっくりになる
以前なら軽々と上っていたソファや階段をためらう。
猫なら、今まで簡単に上っていた棚やキャットタワーへ行かなくなる。
犬なら、散歩のスピードがゆっくりになったり、長い距離を歩きたがらなくなったりすることがあります。
そんなとき、
「年を取ったんだから仕方ない」
だけで終わらせないことも大切です。
関節などに痛みがあったり、病気が隠れていたりする可能性もあります。
以前と違う様子が続く、急に動かなくなった、痛そうにしているなど気になる変化があれば、獣医師に相談しましょう。
3.食べ方や食欲が変わることもある
食べる量が変わる。
食べるスピードが遅くなる。
硬いものを食べにくそうにする。
体重が増えたり減ったりする。
年齢を重ねることで、食事にも変化が出ることがあります。
環境省も、高齢の犬猫では消化機能などの変化に配慮し、食べやすさや栄養バランスを考えることを案内しています。環境省_住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
ただし、
「シニアになったから、とりあえずシニア用フード」
と自己判断するのではなく、その子の体重や健康状態、持病なども考えて選ぶことが大切です。
気になる場合は、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
4.目や耳などにも変化が現れることがある
名前を呼んでも以前ほど反応しなくなった。
暗いところで歩きにくそうにする。
物にぶつかるようになった。
こうした変化が現れることもあります。
視力や聴力が低下してくると、突然触られて驚くこともあります。
後ろから急に触るのではなく、正面から近づいたり、床の振動などで存在を知らせてから触れたりするなど、その子に合わせた接し方を考えてみましょう。
5.トイレを失敗するようになることもある
今まできちんとできていたのに、トイレ以外の場所でしてしまう。
トイレまで間に合わない。
猫なら、トイレの縁をまたぐことが負担になることもあります。
高齢になると、こうした排泄の変化が見られる場合があります。環境省のガイドラインでも、高齢犬猫では介護が必要になったり、認知機能の変化に伴って不適切な排泄などが見られることがあると紹介されています。環境省_住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
ただし、排泄の失敗は病気が原因の場合もあります。
「年だから仕方ない」だけで済ませず、急に失敗が増えた場合などは獣医師へ相談しましょう。
シニアになったら、家の中も少しずつ変えていく
犬や猫の体が変わっていくなら、暮らす場所もその子に合わせて変えていけばいい。
大がかりなリフォームをする必要はありません。
ちょっとした工夫だけでも、暮らしやすくなることがあります。
滑りやすい床を見直す
フローリングなど滑りやすい床では、足腰への負担が大きくなることがあります。
必要な場所に滑りにくいマットなどを敷く方法もあります。
段差を少なくする
ソファへ上がりにくそうならステップを置く。
高いところへ上る猫なら、途中に低い台を置く。
若いころなら一気にジャンプできた高さでも、シニアになると難しくなることがあります。
「もう上っちゃダメ」ではなく、「少ない負担で行ける方法はないかな?」
と考えてあげるといいですね。
トイレへ行きやすくする
特に猫の場合、高い縁をまたぐのが負担になることがあります。
出入りしやすいトイレを検討したり、寝ている場所から近いところにもトイレを置いたりする方法があります。
犬の場合も、排泄の間隔や体の状態によって、それまでとは違ったサポートが必要になることがあります。
水飲みやごはんへ行きやすくする
水を飲むために毎回階段を上り下りしなければならない。
そんな環境なら、よく過ごす場所にも水を用意するなど、移動の負担を減らすことができます。
「犬や猫を生活に合わせる」から、「生活をその子に合わせて少し変える」。
シニア期には、そんな発想も大切になってきます。
散歩や遊びは「やめる」より、その子に合わせる
シニア犬になったから散歩はもう必要ない。
シニア猫だから遊ばなくてもいい。
そう単純なものではありません。
体調に問題がなければ、無理のない範囲で体を動かしたり、匂いや景色などの刺激を楽しんだりすることも、その子の日常の楽しみになります。
ただし、
若いころと同じ量を求めないこと。
犬なら散歩の距離や時間、スピードを調整する。
猫なら激しくジャンプする遊びだけでなく、その子が無理なく追えるおもちゃで遊ぶ。
「昔はこれくらいできたのに」ではなく、
「今のこの子は、どれくらいなら楽しめるかな?」
という目線で考えてみましょう。
「老化かな?」と思った変化に病気が隠れていることも
シニア期になると、
「年だから寝ているんだろう」
「年だから食欲が落ちたのかな」
「年だからトイレを失敗するんだろう」
と思ってしまいがちです。
でも、すべての変化が老化によるものとは限りません。
体重が急に減った。
水を飲む量が大きく変わった。
食欲がない。
立ち上がるのを痛がる。
呼吸の様子がおかしい。
排泄の状態が変わった。
性格や行動が急に変わった。
こうした変化に気づいたら、「高齢だから」で片づけず、動物病院へ相談することが大切です。
そして、具合が悪くなってから病院へ行くだけでなく、かかりつけの動物病院と相談しながら、その子の年齢や状態に合った健康チェックを受けていくと安心です。
さらに年齢を重ねると、介護が必要になることもある
年齢を重ねても、比較的元気に暮らし続ける子もいます。
一方で、
自分で立つことが難しくなる。
歩くとふらつく。
目が見えにくくなって色んな所にぶつかる。
食事の時は手伝ってあげないと、うまく食べられなくなる。
排泄のサポートが必要になる。
夜に鳴いたり、落ち着かず歩き回ったりする。
寝たきりになる。
そんな変化が起きることもあります。
環境省も、高齢犬猫では老いに伴う症状によって介護が必要になる場合があり、その現れ方には個体差があるとしています。環境省_住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
排泄が難しくなれば、ペット用のおむつなどを使うこともあります。
寝たきりになった場合には、寝床や体勢、清潔を保つ方法など、それまでとは違うお世話が必要になることもあります。
ここで大切なのは、
全部を飼い主だけで完璧にやろうとしないこと。
分からないことや負担が大きいことは、獣医師や動物看護師などに相談しながら、その子と飼い主の双方にとって続けられる方法を考えていきましょう。
飼い主の暮らしも変わるかもしれない
ペットの介護が始まると、変わるのは犬や猫の生活だけではありません。
夜中のお世話が必要になる。
長時間の外出が難しくなる。
通院が増える。
仕事との調整が必要になる。
介護用品などの費用がかかる。
飼い主自身の生活にも影響が出ることがあります。
環境省の審議会でも、高齢ペットの介護・看護を支える家族や周囲の協力者がいないケースなどが報告されており、ペットの介護を家庭だけの問題にせず、周囲や専門職とのつながりを考える重要性が議論されています。
環境省_令和7年度第1回獣医事審議会免許部会・中央環境審議会動物愛護部会愛玩動物看護師小委員会(合同会合)議事録
だからこそ、まだ元気なうちから、
「もし介護が必要になったらどうしよう?」
と少しだけ考えておくことも、決して早すぎることではありません。
子犬・子猫だったあの子が、いつの間にか自分の年齢を越えていく
ここは少し、店主Icchi自身の話をさせてください。
以前、わが家では姉妹の猫2匹と暮らしていました。
生後2か月ほどで迎えた、小さな小さな猫たちです。
最初は人見知りをして、隠れてばかり。
ところが数日もするとすっかり慣れて、そこからは元気いっぱいでした。
ボックスティッシュからティッシュを次々と引っぱり出したり。
カーテンを伝って高いところまで上ってしまい、カーテンがボロボロになったり。
「もう~!😅」
と思うようないたずらも、今思えば懐かしい思い出です。
そんな子たちも、少しずつ大人になりました。
そして気がつけば、いつの間にか人間の年齢を追い越していました。
以前ほど遊ばなくなったな。
寝ていることが増えたな。
トイレを失敗することが多くなったな。
そんな小さな変化を一つずつ感じながら、
「ああ、この子も年を取ったんだな」
と、こちらも少しずつ老いを受け入れていったように思います。
姉妹のうち1匹は11歳で旅立ちました。
若い頃はわりと大きめでコロコロしててた子なのですが、晩年はすい臓が悪くなったせいでかなり痩せていきました。
もう1匹は、そのあともずっと一緒にいてくれて、21歳まで生きてくれました。老衰でした。
その子でも晩年はトイレがうまくできなくなり、おむつを使ったこともあります。
子猫だったころとは、暮らし方もお世話の仕方もまったく違いました。
でも、
元気いっぱいだったころだけが、その子との暮らしではありません。
ゆっくり歩くようになった時間も。
ほとんど寝て過ごすようになった時間も。
お世話が必要になった時間も。
全部ひっくるめて、振り返るとその子と一緒に過ごした愛おしい時間だったのだと思います。
「年を取った=かわいそう」ではない
白い毛が増えた。
歩くのがゆっくりになった。
寝ている時間が長くなった。
昔のようには遊ばなくなった。
そんな姿を見ると、少し寂しい気持ちになることもあります。
でも、
若いころと同じようにできなくなったからといって、その子の毎日から幸せがなくなるわけではありません。
暖かい場所で眠る。
大好きな人のそばにいる。
ゆっくり散歩する。
お気に入りのごはんを食べる。
優しく撫でてもらう。
シニアになった犬や猫には、若いころとはまた違う、穏やかな時間があります。
私たちにできるのは、
昔できたことを求め続けることではなく、「今のこの子」が心地よく暮らせる方法を一緒に探していくこと。
なのかもしれません。
まとめ|ゆっくりになった時間も、大切な暮らしの続き
犬や猫との暮らしには、いろいろな季節があります。
小さなころ。
元気いっぱいのころ。
落ち着いてくるころ。
そして、ゆっくり年を重ねていくころ。
シニアになると、食事、運動、トイレ、住環境など、今までとは違った工夫が必要になることがあります。
さらに年齢を重ねれば、介護が必要になることもあります。
だから、子犬や子猫を迎えるということは、
かわいい時期だけではなく、その子が年老いていく時間まで一緒に暮らすということ。
環境省でも、犬や猫を含む家庭動物について、飼い主がその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」の考え方が示されています。環境省_中央環境審議会動物愛護部会 第50回議事録
若いころとは違う姿になっても、
その子は、ずっと一緒に暮らしてきた大切な家族です。
歩くスピードがゆっくりになったら、こちらも少しゆっくり歩く。
高いところへ上れなくなったら、上りやすい方法を考える。
トイレが難しくなったら、できる方法を一緒に探す。
そうやって、
その子の時間に、私たちの暮らしを少しずつ合わせていく。
シニア期とは、そんな時間なのかもしれません。
